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そのときまでに部長だとか課長だとかの階級をつくってしまうと、身動きがとれなくなって、将来に禍根を残すだろう、という考えがあった。 (「経営に終わりはない」)普通の会社への第一歩組織とは人の権限の大小を決め、仕事の範囲を押し付けてしまう「不平等」なものである。
このような必要悪がなくても企業運営ができれば申し分ないかもしれない。 しかし、このようなアナーキーな状態が素晴らしく機能するのは、中心になる人物にカリスマ性があるときである。
これがなくなれば烏合の衆になり、いつしか緊張感は失われ怠惰が横行することになる。 K氏が社長に就任したときはまさしくそのようなときであった。
企業規模が拡大するにつけ、最低限の組織化を行わなければ身動きがとれなくなる。 H氏は当然、そのことを知っていたはずである。
にもかかわらず、できるだけこの問題を先送りしようとしたのは、H氏流の現実主義であった。 後にその胸中をこう明かしている。

たしかに、創業期の企業は信用もなければ将来性も不透明である。 それなりの学業成績を持つ新卒の人材は、いわゆる大企業、有名企業に流れるものである。
彼らに注目されるようになった頃、彼らの上にどうしようもない上司が居座っていたのでは、伸びる人間も伸びなくなるという計算であろう。 当時のHは、できる人間にはどんどん仕事をさせ、給料もどんどん上げた結果、相当の格差があった。
つまり、Hは当時から実力主義給与体系をとっていたといえる。 それが「普通の会社」のようなピラミッド組織を作らざるを得なくなり、給与体系で「平等」を期さざるを得なくなったころ、強烈な個性の創業者が亡くなれば、急速に活力が減退するのは当然であろう。
一方、HもS同様、商品開発の独創性にこだわる会社である。 部品の共通化や点数削減への取組みは決して強くはなかった。
典型的な例は1989年に発売されたアコードの新型である。 この新車は前モデルと大きな変化はなく、Hも普通の自動車メーカーになったと批判された車である。
圧殺された創造性。 その苦境を打破する答えが、K氏の導入した年俸制や役職定年制であったとは考えにくい。
人件費削減が本当の狙いではないかと疑われるような施策は、社内モラールを破壊させる。 Sが今日進めているように、材料費の圧縮の方が限界利益を拡大させるには手っ取り早い。
Hが固定費の圧縮を主にせざるを得なかったのは、TやNのような強力な部品メーカーを持たなかったという事情も働いている。

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